診療支援
治療

神経・筋疾患
neuromuscular diseases
加藤正哉
(和歌山県立医科大学教授・救急集中治療部)

A.疾患・病態の概要

●神経内科領域で管理されている,表1に挙げられるような神経・筋疾患の多くは慢性的で緩徐に進行性の経過をたどることが多い.すでに診断が確定しているこれらの患者は,多くの場合,薬物療法,理学療法に加えて,生活指導や介護計画も通常の外来診療の中で行われているので,救急患者として搬送される機会は少ない.

●しかし,原疾患の進行に伴い気道や呼吸に急性の問題を生じた場合や,何らかの感染症を合併した場合,長期間留置されているチューブ類のトラブル,栄養管理の上で問題が生じた場合,定期的に服用している薬剤の問題,介護環境の変化に伴う情報の錯綜など,様々な状況で救急外来を訪れることがある.


B.最初の処置

①初期診療で行うべき内容は,急性病態の患者と変わることはなく,重症度評価と気道・呼吸・循環の維持,および中枢神経系の評価である.

②慢性神経疾患に罹患している救急患者を受け入れる場合は,搬送の連絡を受けてから,患者が病院に到着する間の情報収集が重要である.自施設に通院中や通院歴のある患者であれば,当該診療科の診療録から病態急変時の対応を確認することに始まり,普段のADLや加療状況,留置されているチューブの有無,その交換のタイミングなどを把握することができる.他院で管理されている患者の場合は,家族や同伴してくる介護者からの情報に頼らざるを得ないので搬送中にも救急隊を通して,できる限り多くの情報を得ることができれば,診察後の治療方針の決定の際の参考となる.

③患者が生命の危機に瀕している状況であれば,病態を評価する以前に,バイタルサインを安定化させるための処置が必要となる.気管挿管は確実に気道を確保することができる一般的な救命処置であるが,侵襲的行為であり,慢性的に気道確保が困難となりつつある患者にとっては,救命後に残された生命の質に大きな影響を及ぼすことがある.患者搬送の連絡を受け

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