診療支援
治療

消化器疾患
gastroenteropathy
杉本勝彦
(国士舘大学大学院教授・救急システム研究科)

A.疾患・病態の概要

●消化器は,口腔から肛門までの消化管と肝臓,胆嚢胆管などの胆道系,あるいは膵臓と多くの臓器が生理学的に密接に関与している臓器系であり,個々の臓器は解剖学的・生理学的に異なるために,それぞれの慢性疾患の病態・症状は当然異なる.

●消化管の慢性疾患では特別な病態を除いて,炎症性疾患,潰瘍性疾患,腫瘍などがあるが,これらの急性増悪では消化吸収機能障害が主要症状となる.日常の臨床で遭遇する機会が多いのは,腹痛,嘔吐,下痢,発熱,消化管出血(吐下血),通過障害症状などが挙げられる.

●肝臓疾患では全身倦怠感や食思不振,肝機能障害・黄疸などの色素異常や出血傾向,あるいは意識障害などが挙げられる.

●膵臓で主に問題となるのは膵炎の再燃(慢性再発性膵炎)と急性増悪から急性壊死性膵炎の発症である.消化管疾患では潰瘍性疾患に特徴的な出血症状と穿孔による腹膜炎(胸膜炎)の徴候を見過ごしてはならない.


B.最初の処置

 すべての疾患,病態に共通する対応として,まずはその病態の重症度と緊急度を判断する.重症度と緊急度を判断するには,バイタルサインの確認がまず行われる.バイタルサインの確認では,血圧,脈拍数,体温の測定と共に,呼吸数,意識状態の確認も忘れずに行う.循環動態の把握では,血圧,脈拍数以外に簡易に判断できる指標としてcapillary refilling time(CRT:毛細血管再充満時間,blanch test)も切迫している状況では利用できる.

 重症度と緊急度の判断に従って原疾患の処置が行われるが,バイタルサインの確認と同様に,原疾患の処置に取りかかる前に,バイタルサインの致命的な異常に対して蘇生を行っておく.緊急時には原疾患の処置を急ぐあまり,救命に必須である呼吸・循環管理が行われていないことがまれでないからである.

 バイタルサインによる重症度と緊急度の確認,輸液路の確保を

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