A.疾患・病態の概要
●消化器は,口腔から肛門までの消化管と肝臓,胆嚢胆管などの胆道系,あるいは膵臓と多くの臓器が生理学的に密接に関与している臓器系であり,個々の臓器は解剖学的・生理学的に異なるために,それぞれの慢性疾患の病態・症状は当然異なる.
●消化管の慢性疾患では特別な病態を除いて,炎症性疾患,潰瘍性疾患,腫瘍などがあるが,これらの急性増悪では消化吸収機能障害が主要症状となる.日常の臨床で遭遇する機会が多いのは,腹痛,嘔吐,下痢,発熱,消化管出血(吐下血),通過障害症状などが挙げられる.
●肝臓疾患では全身倦怠感や食思不振,肝機能障害・黄疸などの色素異常や出血傾向,あるいは意識障害などが挙げられる.
●膵臓で主に問題となるのは膵炎の再燃(慢性再発性膵炎)と急性増悪から急性壊死性膵炎の発症である.消化管疾患では潰瘍性疾患に特徴的な出血症状と穿孔による腹膜炎(胸膜炎)の徴候を見過ごしてはならない