A.疾患・病態の概要
「精神科救急」で取りあげられる精神科疾患以外で当直などで遭遇する可能性のあるものを中心に取り上げる.
●パニック障害:強い不安・恐怖を伴う,動悸,胸痛,窒息感などの症状(パニック発作)が突然に生じて,循環器系疾患や呼吸器疾患などを疑われて救急搬送されることがある.なんの誘因もなくパニック発作が生じること,また,薬物療法が有効なことなどから生物学的要因が疑われている.
●解離性昏迷:昏迷とは,意識は保たれているのに外的刺激にまったく反応せず,自発的な運動や発語がない状態で,昏睡などの意識障害を疑われて救急搬送されることがある.このうち解離性昏迷は若い女性に多く,対人関係のトラブルなどの社会的,環境的,心理的な問題が心因となって生じる.解離性障害や精神発達遅滞などの精神科疾患を背景とする不適応反応として出現することが多く,葛藤や不安からの現実逃避としての不随意な症状と考えられ