A.小児ならではのポイント
●ショックとは,「組織の酸素需給に不均衡をもたらす全身の循環障害」である.生体に対する侵襲や侵襲に対する生体反応の結果として,重要臓器の血流が維持できなくなり,細胞の代謝障害や臓器障害が起こる急性の症候群をさす.進行すれば心肺停止に陥る危険な病態であり,迅速な判断と対応が要求される.
●小児は年齢体格によって,心拍数や血圧の正常値が異なる.また,バイタルサインやモニター値の測定が困難なこともある.そのため成人以上に,バイタルサインやモニター値に依存することなく,身体所見から迅速にショックを認知することが重要である.
●小児では輸液路確保が困難なことがあり,ショック症例ではその傾向はさらに顕著.輸液路確保の遅延は状態の悪化に結びつくため,必要時には積極的に骨髄路の確保を選択しなければならない.
B.最初の処置
1初期評価と対応
①まず,初期評価(general assessment)として,一般状態の評価を行う.患児と向き合ってから数秒間で,視覚的および聴覚的に,おおまかな全身状態を評価し,緊急度を判断する.
②評価の項目は,pediatric assessment triangle(PAT)にあげられる3項目である(図1図)が,これらを詳細に診察してはならない.あくまでも「ぱっと見」で瞬時に全身状態を「良好」「不良」「CPRが必要」に分類する.
③全身状態「不良」または「CPRが必要」であると判断したら,すぐに1)人員および蘇生用物品を集め,2)高流量酸素投与を開始し,3)モニター類を装着する.
2一次評価とショックの認知
1一次評価
①初期評価で全身状態が「不良」であれば,一次評価(primary assessment)を迅速に行う.一次評価は,全身状態不良の患児に対して,下記A~Eのどこの状態が不良であるかを評価する過程であり,ショックの有無はここで認知する.
②評