A.小児ならではのポイント
小児の腹痛について,初期診察におけるポイントと診断・治療のポイントに分けると理解しやすい.
●初期診療においては視診と問診が成人よりも重要となる.自ら訴えることのできない乳幼児においては疾患の緊急度(重症度)は表情・動作から評価するしかない.この点で入室時の痛がり方,表情,目つきをまず頭に入れる.次いで保護者から「いつから・どこが・どのように痛む様子か」,嘔吐や便性・血便とともに腹部の打撲の有無を聴取する.
●この段階で,ショック症状(頻脈,末梢冷感,湿潤,毛細血管再充足時間CRT>2秒)や激しい啼泣,顔面蒼白,歩行不可能,前傾姿勢,右の側彎姿勢,頻回の嘔吐,血便を認めれば緊急対応を考慮する.
●触診や聴診についても,小児は泣かさない工夫が必要であるが,激しく泣いている場合は泣きやんだ時に素早く診察する.
●診断・治療において小児では内因性疾患による腹痛が多いため診断を急ぎがちであるが,まず生理的評価を行いバイタルサインの安定を図ることが重要である.腹部鈍的外傷,心筋炎,精巣捻転はまれであるが,診断の遅れが予後を不良にするため注意が必要である.また,常に小児虐待に対する冷静な判断が必要となる.
B.最初の処置
①小児の腹痛をきたす重篤な救急疾患の初期対応は,図1図に示すようにトリアージが重要であり,蘇生,緊急と区分された場合は,直ちに一次評価(ABCDE)を行う.呼吸不全,低血圧性ショックがあれば,酸素投与(フェイスマスク10L/分)の後,スタッフを招集し,末梢静脈ルートの確保(3分以上かかるときは骨髄針を使用する)し,ショックへの輸液(生理食塩水/乳酸リンゲル液薬10~20mL/kgを5~10分でボーラス投与)を行う.自発呼吸がなければ補助呼吸を開始する.
②バイタルサインが安定すれば,二次評価(signs and symptoms,allergy,medi
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