診療支援
治療

急性喉頭蓋炎
acute epiglottitis
渡部誠一
(土浦協同病院・小児科部長)

A.小児ならではのポイント

●急性喉頭蓋炎は声門上の喉頭蓋と披裂部を含む声門上組織の蜂巣炎で,腫脹により上気道が閉塞し,急速に進行して窒息をきたすことがある.

●小児の急性上気道閉塞性疾患には,気道壁腫脹をきたす喉頭気管炎(クループ)・喉頭浮腫・喉頭蓋炎・細菌性気管炎の4疾患,内腔に異物が入り閉塞する気道異物,気道外からの圧迫する膿瘍(深頸部膿瘍)・腫瘍・血管腫などがある.誤飲・窒息は乳幼児の事故の10%にみられ,乳幼児の急性発症呼吸困難では気道異物を必ず鑑別すべきである.

●急性喉頭蓋炎は喉頭気管炎を鑑別する.急性炎症性上気道閉塞性疾患の中では,喉頭気管炎が最も多く,急性喉頭蓋炎はまれである.喉頭気管炎は嗄声・犬吠様咳嗽を示すが,喉頭蓋炎ではそれがない(皆無ではない).喉頭蓋炎の特徴的所見は,嚥下困難・発声困難・流涎で,患児は顎先を上げ,首をそらした坐位をとり(tripod position),臥位を嫌がる.アドレナリン(ボスミン®)+ステロイド吸入療法は喉頭気管炎に有効であるが,喉頭蓋炎には無効である.

●急性喉頭蓋炎を疑ったら,気道確保の準備をする.急速に悪化するので慎重に経過観察する.臥位,啼泣,咽頭刺激などは悪化させる.いつでも気道確保が可能なように準備をしてから処置を行う.

●挿管困難例がある.喉頭蓋と披裂部の高度腫脹のため,挿管困難なことがある.喉頭展開,挿管手技で悪化させることもあり,気管挿管する時は複数医師,小児の気管挿管に熟練した医師・麻酔科医の立ち会いあるいは処置を依頼する.挿管困難時の対応,たとえば気管チューブイントロデューサ(ガムエラスティックブジーなど),輪状甲状間膜穿刺のためのクイックトラック®,ミニトラック®,トラヘルパーなどを用意する.

●気管挿管後も改善しないことがある.侵襲性Hib感染症*1の一部として発症することがあり,肺炎・菌血症の治療を要す

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