A.小児ならではのポイント
●腸重積症は,乳幼児にみられる急性腹症の中で最も遭遇する頻度が高い.発症年齢は,3か月以上1歳未満の乳児で60~80%を占め,3か月未満,6歳以上はまれである.
●小腸または大腸の一部が肛門側腸管内に入り込む結果,内筒の腸管に血流障害が生じ,絞扼性イレウスとなって,腸管壊死,腸穿孔をきたす場合もある.
●しかし,早期の診断で非観血的に治療できる点が特徴で,救急診療の場で乳幼児を診る時には,常に頭の中に本疾患を据えておき見逃してはならない.
●乳幼児にみられる腸重積の多く(80%以上)は,先進部の腸管が引き込まれる部位に明らかな病変を認めない特発性腸重積である.器質的原因(病的先進部を持つ)は,4歳以上の年長児に多い.
B.最初の処置
PAT(小児患者評価の3要素:pediatric assessment triangle)により患児の全体像を把握する.すなわち,外観(appearance),呼吸状態(work of breathing),皮膚への循環(circulation to skin)により患児の状態を評価し,意識障害,ショック状態にあるならば,呼吸循環動態の回復が優先される.患児が急に泣きだしたり,不機嫌な場合あるいは主訴が嘔吐や血便の時には,本症を想定して診断を進める.
C.病態の把握・診断の進め方
1診断および鑑別
①間欠的腹痛,嘔吐,血便の3主徴が典型的症状であるが,これらが揃うのは半数以下で,このうちいずれか2つで来院することが多い.腹痛(不機嫌)が最も多く,次に嘔吐が多い.嗜眠傾向,皮膚蒼白,筋緊張低下が,腹痛(不機嫌)の合間にみられる場合は,本症を疑う.
②触診で右上腹部から正中に先進部の腫瘤を触れることもあるが,啼泣している場合は難しい.
③浣腸を行うと血便(典型的にはイチゴジャム様であるが,初期には少量の血液の点在や血線の場合もある)がみられ
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