診療支援
治療

外傷
pediatric trauma
浮山越史
(杏林大学准教授・小児外科)

A.小児ならではのポイント

●不慮の事故は,1歳以上の小児における死因の第1位であり,その中で外傷が最も多い(表1,外傷関連死).小児外傷の主な原因は,交通事故(自転車のハンドルバー外傷),転倒,転落,打撲,そして虐待である.

●小児外傷患者の評価や治療法の優先順位は成人と同様であるが,小児の特徴に留意する必要がある.本人からの情報は得られにくく,予備能力が少なく急変の可能性があり,注意深い系統的な全身の評価と,迅速な対応を必要とする.小児において外傷による早期死亡の原因は,気道閉塞と不十分な輸液による循環虚脱であるので,輸液過剰より輸液不足を避けることが重要である.

●小児には解剖学的特徴がある.頭部が体幹に比し大きく頭部外傷が多い.小児の気道は相対的に細く,気道閉塞や換気不全を起こしやすい.肋骨などの骨格の骨化が完成していないため,軟らかく,たわみやすい.また,筋肉も薄く脆弱である.そのため,外表の創が軽微で,骨折を伴わなくても,内部臓器が損傷している可能性がある.脂肪組織や結合組織が薄く,臓器が隣接しているため,多発外傷になりやすい.

●小児には生理学的特徴がある.肺胞面積や機能的残気量は少ないが,酸素消費量は多いので,肺胞低換気から容易に低酸素血症,アシドーシスになる.緊張性気胸はより低圧で生じ,急速に進行する.新生児,乳児期は口呼吸より鼻呼吸が主であり,出血により換気不全をきたしやすい.心拍出量維持は主に,心拍数に依存するので,高度の徐脈(60/分以下)では胸骨圧迫が必要である.小児の体表面積あたりの熱喪失量は高く,低体温になりやすい.また,低体温から容易に,アシドーシスを呈する.病態変化が速く,出血による循環血液量の減少は致死的になる.


B.初期診療

1PAT(pediatric assessment triangle)

外観,呼吸状態,循環をすばやく評価し,sick(un

関連リンク

この記事は医学書院IDユーザー(会員)限定です。登録すると続きをお読みいただけます。

ログイン
icon up
あなたは医療従事者ですか?