こども病院で勤務していると小児・乳幼児の救急疾患にしばしば遭遇する.その主な症状は痛み,出血,呼吸困難・喘鳴,嚥下困難などである.
①痛みを生じる致命的な疾患はないが耳鼻咽喉科救急疾患として頻度の高い疾患は急性中耳炎,鼓膜外傷,外耳道外傷,外耳道異物などが挙げられる.
②出血については疾患の部位別に外耳道外傷,鼻出血,口腔内出血などが挙げられる.
③喘鳴・呼吸困難,嚥下困難を生じる疾患は気道異物,食道異物が代表的な疾患で,その他扁桃周囲膿瘍,急性喉頭蓋炎,急性仮声帯炎,急性声帯炎,急性声門下喉頭炎があり,これらの疾患は致命的な状況に陥る要素を含んでいる.
代表的な救急疾患である急性中耳炎,鼻出血(鼻骨骨折を含む),急性喉頭蓋炎,急性声門下喉頭炎,気道(喉頭,気管,気管支)異物,食道異物について述べる.
Ⅰ.急性中耳炎
A.診療のポイント
●かぜにかかり咽頭痛・鼻漏を訴え,耳痛・耳漏が出現すると急性中耳炎を疑う.
●受診時には機嫌が悪く多くは発熱を伴う.
B.最初の処置
①急性中耳炎は鼓膜の視診が重要であるが,小児の場合外耳道が細く,観察が容易でないこともあり,種々の大きさの耳鏡を用い鼓膜を観察する.
②鼓膜は全体に発赤し,浮腫状で中耳腔には貯留液の存在が認められる.
③治療には鼓膜を麻酔し,鼓膜切開を行い,中耳腔の貯留液を吸引除去し抗菌薬,鎮痛薬の投与を行う.
④夜間の疼痛時には鎮痛解熱薬(坐薬,内服)を使用するように家族に指導する.
C.病態の把握・診断の進め方
急性中耳炎は通常,上気道感染に伴って経耳管経由により細菌が中耳腔に侵入し発症する.起炎菌は肺炎球菌,インフルエンザ菌が多いため,アンピシリン系の抗菌薬が投与される.乳幼児に多い理由は,乳幼児では耳管が大人と比較すると太く,短いため経耳管経由の感染を生じやすいからである.幼稚園,保育園に通園している子どもたちは,中耳炎に反復罹患することが