診療支援
治療

泌尿器科救急
urologic emergencies
百瀬 均
(星ヶ丘厚生年金病院・病院長補佐)

Ⅰ.尿管結石嵌頓による疝痛発作


A.ER診療のポイント

●同じような痛みをきたしうる尿管結石嵌頓以外の重篤な疾患を除外する.

●尿管ステント留置の要否を判断する.

●(機能性)単腎症例では尿管結石嵌頓により無尿状態となる.またまれに疝痛による交叉性無尿(対側腎からの尿分泌も低下する状態)が出現することもある.したがって,対側腎の状態や腎機能についての注意も重要である.

●疝痛発作時の造影剤使用や過剰な輸液は,利尿作用による腎盂内圧上昇の結果,疼痛が増強するのみならず腎盂破裂をきたす危険性があるため禁忌である.


B.最初の処置

1理学的所見

 典型例では患側の背部~側腹部痛を呈し,同時に腎部の圧痛や叩打痛が確認される.腹膜刺激症状はないか,あったとしても軽度である.明らかな腹膜刺激症状や腹部に圧痛点がみられる場合は,他疾患を考慮するべきである.

2疼痛解除

 鎮痛薬の第1選択はNSAIDs坐薬である.疝痛が長時間持続することは少なく,通常は時間の経過と共に痛みは軽減するが,強い疼痛が持続する場合はペンタゾシン(ソセゴン®,ペンタジン®)の筋肉注射を用いる.

3腹部単純CT

 痛みのコントロールができた時点で,結石の確認・水腎症や尿の溢流の有無,他疾患の検索をかねて,腹部~骨盤部の単純CTを撮影する.対側腎の状態を確認することは,腎機能障害の危険性を評価する上で重要である.

4尿検査

 採尿が可能であれば,検尿で血尿と膿尿の有無を調べる.血尿は尿路結石の存在を支持し,膿尿は尿路感染の合併を示唆する所見である.ただし,血尿を認めないからといって,結石の存在を否定すべきではない


C.病態の把握・診断の進め方

1鑑別診断

①頻度は消化管疾患による急性腹症が多い.

②解離性腹部大動脈瘤も重要な鑑別疾患.

③腎腫瘍内出血や腎腫瘍自然破裂,あるいは腎梗塞も頻度は少ないものの鑑別の対象となる.

④また,整形外科的腰痛症が結石嵌頓

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