A．診察のポイント

●産婦人科救急において，確認すべき点は，月経歴や妊娠の有無である．

●産婦人科救急で，最も多い症状は腹痛・性器出血である．特に，腹痛に関しては，救急外来にても日常的に遭遇し，消化器や泌尿器など他科疾患との鑑別を要する．

●腹痛を起こす産婦人科疾患を表1図に示す．

●性器出血を起こす産婦人科疾患を表2図に示す．

●急性腹症の原因は，産婦人科疾患以外に，消化器疾患，泌尿器疾患，血管系疾患などが挙げられる．表3図に示す．

●対応を急ぐべき産婦人科疾患は，異所性妊娠（子宮外妊娠）・卵巣出血・常位胎盤早期剥離・子宮破裂・前置胎盤などの大量出血を起こしうる可能性のあるものと，未受診妊婦の陣痛発来である．卵巣腫瘍や子宮筋腫の茎捻転や破裂も痛みが強いため，迅速な対応が求められる．

B．最初の処置

　産婦人科疾患による腹痛・性器出血では，大量出血を伴う可能性があるため，バイタルサインを確認する．

①初経年齢，閉経年齢，最終月経，月経周期，月経痛の有無，性交歴，妊娠の可能性について問診する．本人の訴えだけでは，妊娠の可能性が否定できない場合には妊娠検査薬にて確認する（本人の訴えは，信用できない可能性を念頭に置く）．

②性器出血を主訴に来院した場合には，出血量や月経周期と出血の関係を確認する．出血量は，タンポンやナプキンの交換頻度についてや，いつもの月経量との比較について問診する．3時間以内にナプキンの交換を要する場合や，月経2日目より出血量が多い場合には，出血多量と判断する．

③腹痛を主訴に来院した場合には，腹痛の部位，発症様式，痛みの性状，月経や性交との関係の有無，発熱の有無を確認する．

1腹部診察　圧痛の有無・部位，腹膜刺激症状の有無，腫瘤の有無を触診する．

2内診

①腟鏡診にて帯下の性状（白色，水様性，カッテージチーズ様，茶色，膿性，血性，凝血塊），悪臭