診療支援
治療

精神科救急
psychiatric emergencies
工藤 喬
(大阪大学大学院准教授・精神医学教室)

A.診療のポイント

●精神科救急の守備範囲として,身体疾患あるいは薬物に起因する精神症状,脳器質性障害による精神症状,そして精神疾患による精神症状があり,それらの鑑別が何より重要である.

●実際には,まず初期鎮静をかける必要が多く,内服による鎮静法,注射による鎮静法,さらには睡眠を伴う鎮静法から選択して行う.

●鎮静と並行して,身体疾患・脳器質性疾患の検索を積極的に行う姿勢が大事である.採血,脳画像検査,できれば脳脊髄液検査を行う.

●入院などの治療に対して同意を得ることが困難な場合も多く,精神保健福祉法の適応が必要となれば,早期に精神保健指定医の指示を仰ぐ必要がある.


B.最初の処置

1初期鎮静

 精神科救急において患者の鎮静を図ることが第一に求められることが多いが,並行して精神症状の原因疾患を特定していくことは極めて重要である.処置による効果と副作用についてと「適応外使用」になる場合はその旨を,患者本人または家族に事前に説明する努力をしなければならない.以下に示す処置は日本精神科救急学会の鎮静法指針に準拠したが,安全性の高い方法から示しており,実際の鎮静法の選択はこの順で考慮していくべきである.鎮静処置はあくまで最小限にとどめることが肝要である.

1内服による鎮静

①ロラゼパムの投与:ロラゼパム(ワイパックス®)は半減期が短く活性代謝物がないので,肝疾患の患者などにも使いやすい.ベンゾジアゼピン常用者には避けるべきである.

②リスペリドン内用液の投与:リスペリドン(リスパダール®)内用液はハロペリドール(セレネース®)注射剤に匹敵する程,作用発現時間が早い.アカシジア,ジストニア,錐体外路症状の出現に注意する必要がある.

③オランザピン口内崩壊錠の投与:オランザピン(ジプレキサ®)は糖尿病の既往がある患者には禁忌である.

2注射剤による睡眠を伴わない鎮静

①ジアゼパム(セルシン®,ホリ

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