A.病態
1発生機序と病態
●骨盤骨折では,しばしば後腹膜へ大量に出血する.特に骨盤環が破砕される不安定型骨盤骨折は,内腸骨動脈領域の血管が損傷される場合が多く,大量後腹膜出血によりショック状態となる危険が高い.また不安定型骨盤骨折は,大きな外力によって発生するため,多発外傷であることが多い.そのため,特に緊急性の高い外傷として認識しておく.
●重症骨盤骨折に伴う後腹膜への出血量は,1,000~3,000mL程度であるが,これに尿路系の損傷や会陰の開放創(開放性骨盤骨折)が合併すると出血量は,4,000~5,000mLにも及ぶ場合がある.不安定性の骨盤骨折が確認され,外尿道口からの出血や会陰部の出血を認めた場合には,最重症の骨盤骨折と考え,対応する.
●膀胱・尿道は恥骨結合のすぐ後方に近接し,前方の骨盤骨折によって損傷を受けやすい.膀胱損傷は腹膜外と腹膜内に分類されるが,骨盤骨折に合併するものは多