診療支援
治療

陰部外傷
perineal injury
勝見 敦
(武蔵野赤十字病院・第二救急部長)

A.病態

1尿道

●尿道損傷の頻度は外傷症例の約0.5%である.排尿障害を伴う.受傷機転は交通事故によるものが最も多く,バイク乗車によるサドル外傷や,歩行者であれば骨盤骨折に伴って損傷することが多い.

●尿道カテーテル挿入によるものもある.男性の尿道が長いため,患者の大部分が男性で女性はまれである.女性の尿道損傷は腟損傷を合併する率が高い.

●バイク乗車で発生するサドル外傷は前部尿道損傷が多い.会陰部が恥骨の間とバイクのタンクなどに挟まって損傷する(図1).後部尿道損傷は骨盤骨折に伴うことが多い.骨盤骨折の約10%に尿道損傷が合併する.尿道バルーン挿入時などの医原性損傷の場合には球部尿道が多い(図2).

2陰茎

●陰茎折症は,勃起時に強い外力が加わると,伸展した陰茎海綿体白膜の断裂によって発生する外傷である.性交時,自慰などによって生じることが多い.事故などの外傷の他,寝返りした際にも発生する.尿道損傷を合併する場合もある.

●陰茎切断は,陰茎そのものが切断された状態である(図3).傷害による場合もあるが,多くは精神疾患のある患者自身による切断である.

3陰嚢,精巣

●陰嚢剥皮症は,皮下組織が強い外力で巻き込まれて皮膚が剥離した状態.陰茎も同様に剥離することがある.バイク,自転車などのサドル外傷に伴って起こる.

●精巣破裂はスポーツ,交通外傷の順で報告されている.精巣は強靱な白膜に包まれているが,強い外力によって恥骨や大腿骨に睾丸が押し付けられ破裂する.

●外傷性精巣脱出は,精巣が外力によって陰嚢外に移動(脱出)した状態.外鼠径輪を通過して腹腔側,鼠径管内に脱出した状態を内在性精巣脱出,それ以外の皮下組織内に脱出したものを表在性精巣脱出と分類する.

●内在性,表在性とも陰嚢の皮膚が保たれている非開放性損傷であるが,陰嚢を破って外に精巣が脱出している開放性の場合は陰嚢外精巣露出という.交通事故

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