A.病態
●熱傷とは,高温による生体の組織損傷(皮膚の損傷)のことであり,熱傷が及ぼす各臓器への影響は,熱の温度と接触時間により異なる.一般的に44℃の熱は5~6時間接触し続けた時に熱傷を生じるのに対し,70℃以上では瞬時に熱傷が生じる.
●熱による生体への作用は,表皮・真皮に傷害をきたす直接作用と,傷害を受けた組織において種々の物質が産生され各臓器へ影響を及ぼす間接作用とに分けられる.また,熱傷という病態においては,受傷部位や受傷面積,受傷深度により様々な臓器に障害が及ぶが,受傷~リフィリングまでの血管透過性亢進に伴う循環血液量減少性ショックや,全身の浮腫を主体とする急性期,血管透過性の亢進が沈静化し細胞内や間質からfree waterが血管内に流入することにより循環血液量の増加による肺うっ血や心不全をきたしうるリフィリング期,その後,創感染や肺炎などを併発しやすくなる感染期など,病態に変化