診療支援
治療

熱傷の局所管理
thermal injury
林 靖之
(済生会千里病院千里救命救急センター副センター長)

A.病態

●熱傷による皮膚障害は表1に示すとおり,傷害される深さによりⅠ度からⅢ度に分類される.

 ・Ⅰ度熱傷:傷害が表皮内に留まり,紅斑,発赤といった症状が出現するが,そのまま治癒する.

 ・Ⅱ度熱傷:表皮および真皮の傷害であるが,傷害が真皮浅層で留まる浅達性Ⅱ度熱傷(superficial dermal burn:SDB)と傷害が真皮深層まで達する深達性Ⅱ度熱傷(deep dermal burn:DDB)とに分けられる.浅達性Ⅱ度熱傷は水疱,紅斑を認め,疼痛が強いが10日程度で瘢痕を残さず治癒する.深達性Ⅱ度熱傷も水疱を認めるが,色調はやや白色を呈することが多く,知覚鈍麻が認められる.上皮化までの日数も,創周囲からの上皮化が主体となるため3~4週必要となることが多い.

 ・Ⅲ度熱傷:真皮全層の傷害であり,創自体が自然治癒することはなく熱傷創を切除した上で植皮術を考慮する必要がある.


B.初期診療(重症度判断)

①まずはバイタルサインの評価およびその安定化を行う.詳細は「全身管理」の項を参照のこと.

②引き続き,臨床的状態からの重症度判定を行い,救命救急センターなどの専門施設で専門医による治療を実施すべきか,そのまま当該施設で治療を継続すべきかについて判断する.判断基準の一例を表2に示す.


C.コンサルテーションと根本治療

 治療施設に関する判断基準により,専門施設での治療が必要と判断されれば,専門医にコンサルトし転送を行う.自施設で治療可能と判断されれば,全身管理と並行して局所管理を開始する.

1全身管理

 バイタルサインの経過を見ながら輸液量の調節,栄養管理,感染対策などを行う.詳細は「全身管理」の項を参照のこと.

2局所管理

 熱傷創では深達度によって対応が異なるため,深達度を的確に判断した上での局所管理が重要となる.

1Ⅰ度熱傷 表皮のみに傷害が留まっており,局所の炎症とそれに伴う疼痛の

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