A.病態
●異物による外傷の主病態は,出血と感染である.
●異物の刺入部位,血管との関係により出血の程度は様々である.
●異物は刺入部位が小さい割に深い創となっている場合が多く,感染を念頭に置いた処置をすべきである.
●異物の種類によってはX線検査での検出は困難であり,摘出後も異物が残存している可能性を常に考えておく必要がある.
●自ら何度も異物を刺入する症例では,精神疾患を基礎に持つ患者である可能性が高く,精神科との連携が必要となる.
B.初期診療と重症度判断
1病歴聴取
受傷機転と,受傷から来院までの時間を聴取する.
①受傷部位.
②受傷時の状況:汚染創かどうかを判断する.
③異物の材質,形状,大きさ:X線写真に写るかどうかの判断に必要である.
④受傷から来院までgolden time(受傷後6時間以内)内であるかどうか.6時間以上経過していれば感染創として扱う必要がある.
2診察
創の十分な観察をする.
1出血の有無 持続する出血があれば直ちに圧迫止血する.
2感染創かどうか 創周囲の発赤,腫れ,疼痛,滲出液の性状,握雪感の有無などをみる.握雪感があるときはガス壊疽を疑う.
3検査
異物が皮下のどの部位にあるのか,オリエンテーションをつける.
1単純X線検査 必ず2方向で撮影し,異物の立体的な位置を把握する.できればX線透視を用いたほうがわかりやすい.X線に写りにくい異物は軟線撮影を行うが,CTのほうが描出されやすい.
2CT検査 皮下だけでなく胸腔,腹腔内に達するような場合に必須の検査となる.また周囲血管,臓器との関係をみるには最適である.特に近年multi-detector CTの登場により,画像を3D再構築することでより立体的に異物と周囲臓器との関係を把握できる.
4重症度判断
出血と感染の重症度判定をする.
1出血 通常のように血圧,脈拍,呼吸などにより判断する.
2感染 受傷からの時間(6時間以上