Ⅰ.頸椎捻挫
A.概念,病態
●「頸椎捻挫」は,現在では「外傷性頸部症候群」,「頸部挫傷」,「外傷性頭頸部症候群」など様々な病名が使われているが,「むち打ち損傷」の病名は医学的にほとんど使われなくなった.
●頸部を中心に直達あるいは間接的な外力が作用し,骨折や脱臼を伴わない頸部脊柱の靱帯,椎間板,関節包,頸部筋群の筋や筋膜など頸部脊柱の軟部支持組織の損傷である.
●症状は頸部痛,背部痛,頭痛,めまい,異常感覚,筋力低下など多彩である.
●ケベック(Quebec)分類(表1図)と現症および以後数日以内に起こりうる症状を考慮しながら,診療を行う.
●病態と症状を観察し,理学的所見や画像診断,電気生理学的診断,薬物療法,理学運動療法などを計画する.
●受傷の原因は追突による交通事故の場合が多く,事故の相手方,疾病利得に関わる問題,経済面や家庭環境などの社会的背景を含めた心理的・社会的要因を分析しながら診療行為を行う際に留意を要する場合がある.
B.初期診療と重症度判定
1初療室で
1問診 事故の様子,受傷機転など受傷の詳細を患者本人や同乗者,また救急隊から詳しく聴取し,頸部に加わった外力の方向や大きさを把握するように努めることは,症状を理解するうえで重要である.
2症状(表2図) 頸部痛・可動域制限など整形外科的領域,感覚障害・脱力感など神学的領域だけでなく,耳鳴り・めまい・咬合障害など他診療部門にまたがることがある.
3重症度分類―ケベック(Quebec)分類(表1図)
①頸部愁訴,理学神経学的所見,脊椎の構造学的異常の有無からみた分類でgrade0からgradeⅣまでの5段階に分けられている.grade0~Ⅱが臨床的に頸椎捻挫と認識されており,gradeⅢ,Ⅳは外傷性頸髄損傷あるいは神経根損傷に分類される.耳が聞こえなくなる,めまい,耳鳴り,頭痛,記憶障害,嚥下困難,顎関節症などの症状はどのgrade
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