A.病態
●肩とは体幹と上肢が接している部分であり,肩関節とは肩甲上腕関節を含む複合関節を指す.肩関節は球関節構造を呈しており,多くの筋肉で構成されていることから複雑な運動を強い力で行うことが可能となっている.
●治療介入が必要な肩の外傷を負っている傷病者は強い外力にさらされているため,生命予後を左右する外傷を優先して診療することを念頭に置く.
●単純X線写真だけでは診断をつけられない骨折や脱臼が存在するため,断定的に診断を告げることがないようにする.
B.初療と診断
1初療室で
①secondary surveyにて,肩周囲の腫脹・変形,打撲痕の有無を診察する.患者に意識がある場合は,自発痛,圧痛を問診するとともに,触診で丁寧に不安定性,軋轢音の有無を確認する.続いて肩関節の自動運動や関節可動域の制限を診察する.患側の診察だけでは判別がつかない場合は,必ず左右差を比較する.外傷の存在が疑われた場合は