診療支援
治療

膝の外傷
knee injury
岩瀬弘明
(山梨県立中央病院・救命救急センター医長)
松田 潔
(山梨県立中央病院・救命救急センター科長)

A.病態

●膝関節は,人体の中で最大の荷重関節であり,その運動は骨・靱帯・筋肉・軟骨の静的支持と動的支持により制御されている.したがって膝関節における外傷の病態を把握する上で,膝関節の機能解剖を把握することは極めて大切なことである(図1).

●大腿骨顆部は脛骨近位部(脛骨プラトー)と荷重関節を形成するとともに,膝蓋骨後面と膝蓋大腿関節を形成している.膝蓋大腿関節は荷重には関与しないが,膝伸展機構の安定化と強度を保っている.

●膝関節の安定化は骨形態だけではほとんど得られず,線維性の軟部組織により関節の安定化を頼っている.内側支持には内側側副靱帯が機能し,それは浅層と深層に分かれている.浅層は大腿骨内側上顆から起こり関節裂隙から約4~5cm遠位に付着し,膝関節の外反を制御している.深層は関節包靱帯とも呼ばれ,内側半月板に付着してその安定化に寄与している.外側側副靱帯は大腿骨外側上顆より起こり腓骨近位端に付着し,膝関節の内反を制御している.前十字靱帯と後十字靱帯は,それぞれ関節内の顆間部にあり,交差しながら走行し脛骨顆間隆起に付着している.前十字靱帯は脛骨の前方移動を制御するとともに,脛骨の内旋を制御している.後十字靱帯は後方移動を主に制御している.半月板は脛骨関節面に位置することで関節軟骨の接触面を提供し,膝関節にかかる力を分散するとともに膝関節を安定化させる機能がある.

●膝関節の後方には膝窩動脈が走行しており,その近位と遠位は線維性に固定され脱臼や骨折において損傷されやすい.さらに側副血行に乏しいことから,その見逃しは患肢切断に直結することがある.坐骨神経は,膝関節の近位で脛骨神経と腓骨神経に分かれる.脛骨神経は膝窩動脈に伴走し,動脈とともに損傷されることがある.腓骨神経は,腓骨近位部外側をまわり膝関節前外側へ走行するが,浅層を走行することから軽微な外傷で損傷されやすい.診断に

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