診療支援
治療

爪の外傷
nail injury
谷崎真輔
(福井県立病院・救命救急センター医長)

 爪を含む指尖部損傷は日常診療で遭遇する頻度が高い外傷である.その損傷の程度は,単なる爪下血腫や爪下異物から爪根脱臼,爪を含む指尖切断にいたるまで様々であり,それぞれに適した治療が必要である.


Ⅰ.爪下血腫


A.病態

●爪下血腫は爪に圧挫傷を受けることにより爪床の毛細血管が損傷されることで生じる.

●爪床下には知覚神経終末が豊富にあるため,血腫による圧迫により強い痛みを伴う.血腫は通常爪基部に発生し,限局している場合もあれば,爪下全体に広がっている場合もある.


B.治療

①爪下血腫の治療の目的は血腫除去と血腫再発予防である.爪外傷の約半分に末節骨骨折を合併しているため,単純X線写真により骨折の有無を確認する必要がある.血腫が爪下の半分以上を占める場合や疼痛が強い場合には,血腫除去が必要である.

②血腫除去のための開窓にて最も適した場所は,血腫に最も近い爪半月である.血腫除去の方法には,熱したペーパークリップ,18G針,電気メスなど様々なものがある.爪に血腫ドレナージができるほどの十分な孔を開けるため,術後感染防止のため清潔操作で行う.

③18G針を使用する場合には爪の表面に先端を垂直に立て,回転させながら徐々に力を加える.針穴が小さくなりがちで,穴が塞がりやすく,深く刺すと爪床を傷つける欠点がある.

④熱したペーパークリップを使う方法は,ライターとペーパークリップがあれば可能な簡便な方法であり,穴も大きく開けられるが,十分熱してしっかり押し付けつつ短時間で処置しないと疼痛を招く.また爪床に微小な炭が混入してしまうと,外傷性刺青の原因となる場合もある.

⑤爪床は非常に知覚に敏感であるため,血腫ドレナージの際には麻酔は必須である.穿孔部はイソジン®液塗布のうえ,バンドエイド®で被覆しておく.またナイロン糸ドレナージを留置してもよい.ナイロン糸は遠位から近位に向けて挿入し,爪母付近のドレナージを確実

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