爪を含む指尖部損傷は日常診療で遭遇する頻度が高い外傷である.その損傷の程度は,単なる爪下血腫や爪下異物から爪根脱臼,爪を含む指尖切断にいたるまで様々であり,それぞれに適した治療が必要である.
Ⅰ.爪下血腫
A.病態
●爪下血腫は爪に圧挫傷を受けることにより爪床の毛細血管が損傷されることで生じる.
●爪床下には知覚神経終末が豊富にあるため,血腫による圧迫により強い痛みを伴う.血腫は通常爪基部に発生し,限局している場合もあれば,爪下全体に広がっている場合もある.
B.治療
①爪下血腫の治療の目的は血腫除去と血腫再発予防である.爪外傷の約半分に末節骨骨折を合併しているため,単純X線写真により骨折の有無を確認する必要がある.血腫が爪下の半分以上を占める場合や疼痛が強い場合には,血腫除去が必要である.
②血腫除去のための開窓にて最も適した場所は,血腫に最も近い爪半月である.血腫除去の方法には,熱したペーパークリ