A.疾患・病態の概要
●生体は視床下部にある体温調節中枢により熱産生と放熱の調節機構が働いて,37℃前後の体温に保たれている.熱中症は暑熱環境,高温環境における身体の体温調節障害によって起こる状態の症状の総称である.
●環境因子によって発症するため気象条件,発生した場所,発生状況などの病歴聴取が診断に最も重要である.7月中旬から8月上旬に発生件数が増える.発生機序により労作性熱中症(exertional heatstroke)と,非労作性(古典的)熱中症(classical heatstroke)に分類される.
①労作性熱中症:高温多湿環境下での激しいスポーツ(若年男女が多い)や労働作業(中年男性が多い)などの肉体労働で生じる.
②非労作性熱中症:暑熱環境に適応力の少ない小児や高齢者に多くみられる.屋内発症例は,精神疾患や高血圧,糖尿病などの既往を認め重症例が多い.熱帯夜にクーラーをかけずに就