診療支援
治療

気道確保
airway management
井上貴昭
(順天堂大学救急災害医学先任准教授・浦安病院救急診療科)

A.適応,合併症,ピットフォール

 救急・蘇生行為は,BLS(basic life support)やACLS(advanced cardiopulmonary life support)の普及もあって,A:Airway,B:Breathing,C:CirculationのABCの確認と処置が一般的に知られるようになった.この中において,気道の確保は最も優先的に行うべき処置である.気道確保の方法は,用手的気道確保に代表される簡便法から,確実な気道確保の方法として気管挿管法などがあり,さらには外傷など気管挿管困難症例に対する外科的気道確保を要することもある.外傷症例においては頸椎の保護を要するため,気道の確保と同時に愛護的な頸椎保護操作を常に念頭に置く必要がある.

 気道確保を要する病態として,上気道閉塞症例,低酸素血症症例,ショック症例,意識障害症例が挙げられる.また気道確保実施後は,気道の開通性が確実であること,嘔吐反射から保護できること,適正濃度の酸素投与が可能であること,適切なガス交換が可能であることを確認する必要がある.

 気道確保の方法は,①用手的気道確保,②エアウェイによる気道確保,③声門上器具を用いた気道確保,④気管挿管による気道確保,⑤外科的気道確保,が代表的である.一般的に低侵襲性の手技から開始することが望ましいが,予定した気道確保法ができない場合の代換手技を十分念頭に置き,躊躇なく次の方法を選択する.

1用手的気道確保法

①上気道閉塞や意識障害により,患者に声をかけて発声が確認できない場合は,まず用手的に気道を確保する.一般的には頭部後屈顎先挙上法を用いるが,前述のような頸髄損傷が否定できない外傷症例では,禁忌である.

②外傷症例には,現場から装着されてきた硬性カラーによる固定を継続し,頸椎損傷があるものとして愛護的に頸椎を保護する.その際,下顎挙上法が選択され,傷

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