診療支援
治療

膀胱穿刺,膀胱瘻造設
puncture of urinary bladder and suprapubic cystostomy
百瀬 均
(星ヶ丘厚生年金病院・病院長補佐)

A.適応,合併症,ピットフォール

1適応

 尿道カテーテル挿入の適応であるが,様々の理由で経尿道的アプローチが困難な症例.一時的な導尿目的であれば膀胱穿刺,持続的な導尿や膀胱洗浄が必要な場合は膀胱瘻造設(膀胱カテーテル留置)となる.

2合併症

1血尿 出血による血尿出現は程度に差はあるものの必発である.通常は自然に止血する.

2膀胱周囲血腫 穿刺方向が尾側に向きすぎると前立腺を損傷し,膀胱周囲の出血から血腫を形成することがある.通常はある程度出血すると血腫による圧迫で自然に止血するが,ときに止血術を要することもある.

3腸管損傷 膀胱が十分に拡張していない状況や腹部手術の既往による腹膜の癒着がある場合には,穿刺により腸管を損傷することがある.細い穿刺針での誤穿刺であれば,針を抜去するだけで大事に至らないことが多い.腸管を貫通してカテーテルを挿入した場合は,腹膜刺激症状が出現することが多い.この場合,重要なことはカテーテルを抜去しない状態で緊急CT検査を行い,腹腔内遊離ガス像の確認と,カテーテルと消化管・膀胱の関係を評価することである.消化管損傷が確認された場合のみならず否定できない場合にも,ためらうことなく開腹手術を行うべきである.この際にも,術中に損傷部位を検索するためには,カテーテルを抜去しないで手術を進めることが重要である.

3ピットフォール

①膀胱周囲血腫や腸管損傷を避けるためには,膀胱が十分に拡張していることが重要.膀胱の拡張が不十分な場合は,可能であれば膀胱が拡張するまで待つべきである.

②腹部エコーで拡張した膀胱の同定と腸管の介在のないことを確認する.

③救急処置としてとりあえずの尿ドレナージを行う場合は,カテーテル留置ではなく単回穿刺による尿排出にとどめるべきである.

④十分な膀胱拡張が得られない場合は,開腹による直視下でのカテーテル留置を選択するべきであり,泌尿器科に紹介する.

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