S-Bチューブ(ゼングスターケン・ブレイクモアチューブ)は食道・胃噴門部静脈瘤の破裂による出血に対する緊急止血のためのバルーン付き消化管チューブである.一時的止血が目的であり,可及的速やかに内視鏡的治療を実施する.
A.適応,合併症,ピットフォール
1適応
食道静脈瘤,胃噴門部静脈瘤,胃底部静脈瘤(ただし噴門より5cm以内).
2合併症とその対策
1呼吸・循環障害 膨張したバルーンにより心・肺・横隔膜が圧迫され呼吸・循環が障害される.バイタルサインやECGモニターによる不整脈を持続的にチェックする.
2食道損傷
①食道バルーンの長時間の圧迫により食道粘膜壊死が起こる.食道バルーンは6時間毎に空気を抜いて予防する.その際,チューブ牽引も一時的に中止し胃バルーンの圧迫も解除する.
②チューブ牽引や自己抜去により胃バルーンが食道内に逸脱し食道破裂を起こす.さらに,食道バルーンの逸脱により喉頭閉塞による窒息をきたす.前鼻孔挿入部で皮膚固定時にマーキングをしてチューブの逸脱に注意し,胸腹部X線によりバルーンとチューブの位置を確認する.
3嚥下性肺炎 食道バルーン上部に貯留した唾液により嚥下性肺炎をきたす.唾液は吐き出すように指導し経時的に口腔内を吸引する.
3ピットフォール
①胃バルーンは完全に胃内に留置されていることを確認した上で膨らませる.
②古くなったS-Bチューブはバルーン部が破損しやすいので使用しない.
B.インフォームドコンセントでの注意点
①S-Bチューブの目的は食道・胃静脈瘤からの出血に対する一時的緊急止血処置であるため,24時間以内の内視鏡下止血治療が必要である.
②チューブは重りを架けて牽引するので苦痛があるが,自己抜去により大きな合併症が起こる.
C.準備するもの
(図1図)
S-Bチューブキット(16~20Fr 1mサイズ・鼻孔圧迫解除スポンジ・マノメーター接続用ルアーコネクター),キシロ