胃管挿入は救急患者の初期治療において,胃内容の吸引・内容確認や消化管蠕動低下による嘔吐に伴う誤嚥性肺炎の予防となる.また,経管栄養の補給や薬剤の投与にも有用である.さらに,胃管を用いた胃洗浄は,誤飲や服毒による中毒物質の消化管からの吸収量を抑制する.また,上部消化管出血時では胃洗浄による血液や凝血塊の体外への除去により,内視鏡検査や処置に有用となる.
A.適応,合併症,ピットフォール
1適応
①胃内容の吸引による減圧と内容確認.胃十二指腸疾患による幽門部通過障害時の胃内容の体外への排泄による症状の緩和.
②気管挿管人工呼吸時の消化管蠕動低下に対する胃内容の排泄と嘔吐の予防.
③消化性潰瘍,胃悪性腫瘍,AGMLなどによる上部消化管出血に対して,血液や凝血の体外への除去と止血,および緊急上部消化管ファイバースコープの前処置.
④胃内に残っている服用(毒)した薬物や毒物などの中毒物質の胃洗浄による体外への排泄除去(中毒物質に対する胃洗浄の適応と禁忌については後述する).
⑤長期経口栄養摂取ができない症例に対して,経管による栄養補給や消化管薬剤投与により消化管機能低下を予防する.
2合併症とその対策
①鼻咽頭粘膜出血:強引に胃サンプチューブを挿入しない.十分なキシロカイン®薬ゼリーの塗布と挿入角度に注意する.意識のある患者は嚥下運動をさせながら挿入する.
②嚥下性肺炎・無気肺:挿入時喉頭反射の嘔吐物誤嚥による.嘔吐反射の強い患者は左側臥位,意識障害患者は気管挿管を行って挿入する.また,胃管による誤嚥や無気肺に注意する.
③胃粘膜損傷:成人で鼻腔,口腔からの挿入距離は50~60cmで十分胃内に達する.長期留置例ではチューブ接触による胃粘膜傷害がみられるので,チューブを時々2~3cm移動させて予防する.
3ピットフォール
①食道静脈瘤や狭窄の疑いがある症例では,出血や穿孔の危険がある.
②胃液の排泄による電解質
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