診療支援
治療

イレウス管挿入
long intestinal decompression tube
坂田育弘
(近畿大学医学部附属病院教授・救命救急センター)

 イレウスには,麻痺性イレウス,単純性イレウスと絞扼性イレウスがある.その治療法としてイレウス管による保存的治療と手術による外科的治療がある.イレウス管の目的は腸閉塞の保存的治療と閉塞部位の診断が目的である.

 薬毒物服用(毒)に対しイレウス管を利用して腸洗浄を行うこともある.


A.適応,合併症,ピットフォール

1適応

①閉塞部位より口側の消化管内容を除去し消化管内減圧,消化管の浮腫を軽減し血流を改善させる.単純性イレウスの治療が主な適応であり小腸屈曲型や癒着によるイレウスで発症後早期では閉塞が自然解除され手術を回避できる症例が多い.また,絞扼性イレウスも外科的治療までの一時的内圧減少により重症化を予防する.

②挿入留置したイレウス管よりガストログラフイン®などの液体造影剤を注入し閉塞部位と病変を診断する.

③薬毒物服用(毒)に対しイレウス管を利用して小腸洗浄を行う.ニフレック®を投与し薬毒物の腸管からの吸収阻害と早期排泄が目的である.

2合併症とその対策

①鼻咽頭粘膜出血,嚥下性肺炎,無気肺:「胃管挿入,胃洗浄」の項,

②上気道の炎症:ネブライザーとポビドンヨード(イソジン®)によるうがい.

③腸管出血,穿孔:留置したチューブより血性排液がみられた場合は,腸管壁のチューブ接触による粘膜損傷が疑われるので,チューブの位置を2~3cmずらす.

④ガイドワイヤーの抜去困難:ガイドワイヤーをチューブ内腔に挿入する際に内腔に十分なオリーブ油を注入しておくことと,チューブにループを作らないように直線化しておくと抜けやすくなる.

⑤イレウス管の抜去困難:治療終了後のイレウス管の抜去は吸引しながら先端が胃内に達するまでは,おおむね10分間に10cmずつ抜去する.

3ピットフォール

①イレウス管留置中に腸管穿孔が起こることがある.腹部理学的所見と臨床検査所見は経時的に観察し,異常がみられた場合は腹部X線を撮

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