診療支援
治療

動脈カニュレーション
arterial cannulation
岡本 健
(順天堂大学浦安病院教授・救急災害医学)

 動脈カニュレーションは,動脈内に挿入したカテーテルに圧トランスデューサーを接続して直接動脈圧をモニターする方法である.非観血的な血圧測定法に比べ,①連続測定できる,②動脈波形が得られる,③動脈血を採血できる,④測定限界が広いなどの利点があり,ICUにおける全身管理の基本手技である.近年,動脈圧波形の解析により連続的に心拍出量を測定可能なフロートラックシステム®が普及しており,肺動脈カテーテルや経食道エコーを用いる従来の方法より簡便かつ非侵襲的な方法として注目されている.


A.適応と禁忌

1適応

 動脈カニュレーションの適応は,①循環動態が不安定な場合やその悪化が予想される病態・手術など動脈圧の持続的な監視を要する場合,②大動脈解離など厳重な降圧管理を要する場合,③呼吸管理のため頻回の動脈血液ガス分析を要する場合,④動脈造影,薬剤の動注療法,動脈塞栓術など検査・治療上動脈内への薬剤投与を要する場合,などである.血管内留置針を用いて末梢動脈を穿刺しカニュレーションする方法と,血管造影検査などで用いたシースやカテーテルをそのまま用いる方法がある.

2禁忌

 禁忌は,①閉塞性動脈硬化症など末梢動脈の高度狭窄(カニュレーションにより末梢側の血行が悪化する危険がある),②人工血管置換部位,③仮性動脈瘤,④透析用動静脈シャント部などであり,動脈穿刺を含め動脈カニュレーションは他部位で行う.また,不穏や認知症などで挿入したカテーテルの予期せぬ抜去が危惧される場合や,そういったトラブルに早期対応できる医療環境が確保できない場合には実施しない.


B.合併症

1出血,血腫

①動脈穿刺が不成功の場合やカテーテル抜去時に圧迫止血が十分でない場合に発生する.圧迫は穿刺部ではなく動脈穿刺部直上で行うことが肝心であり,一般に角度をつけて動脈穿刺するため圧迫部位に注意を要する.

②通常は5~10分間の圧迫で止血するが,血管

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