どのような皮下異物でも基本的な考え方,処置の流れは同じであるが,釣り針,縫い針は少し特殊な点があるので個々に述べる.
Ⅰ.釣り針
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A.適応,合併症
釣り針の先端には返しと呼ばれる部分があり,刺入部に針の後端が露出していたとしても,逆方向に刺入口から引き出すのは適切ではない.返しの部分が組織に引っかかり針の先端が折れてしまったり,周囲の組織を引き裂いてしまうことになる.X線で釣り針の存在と位置を確認した後,局所麻酔手術に準じた準備をして摘出術を行う.
B.インフォームドコンセントでの注意
①手術に準じた処置であり同意書を取るべきである.
②簡単に摘出できないことも多く,救急外来での無理な操作は合併症の可能性もあるため深追いはしないことを説明する.
③眼瞼や耳介などの顔面の各部位では,摘出だけではなくその後の治療も重要であることを説明する.
④刺入した釣り針が土壌などでの汚染が強かったり錆びついていたりした場合には,破傷風トキソイドの必要性を説明する.
C.手技の手順
1準備
①局所麻酔手術での小手術用のセットを用意しておく.血圧計,SpO2モニターはあったほうがよい.帽子,手袋,ガウンなども局所麻酔手術に準じる.
②局所麻酔は基礎疾患のない症例ではアドレナリン含有リドカイン〔キシロカイン薬注射液「1%」エピレナミン(1:100,000)含有®〕で行う.心疾患など基礎疾患があればアドレナリンなしを使用する(前項「膿瘍排膿」→参照).
2消毒 顔面であれば0.05%ヂアミトール®で,顔面以外であればイソジン®で消毒.
3マーキング
①局所麻酔薬を注射したあとは切開すべき部位がはっきりしなくなってしまうので,注射の前にマーキングを行う.
②切開すべきは,刺入した釣り針をそのまま回転させた際に針の先端の出口となるであろう部分である.釣り針の後端が露出していればその部分をモスキート鉗子やペアン鉗子などで把