A.検査の概要
動脈血ガス分析は重症患者の病態を評価する上で必須の検査である.動脈血ガス分析を行うことで,主に患者の呼吸状態と酸塩基平衡異常の評価が可能となる.測定機器によっては電解質を同時に測定できないこともあるが,酸塩基平衡異常を評価するために電解質の値は必須の情報である.また,乳酸値も測定できる場合は末梢循環不全の重篤度や治療効果の判定にも役立つ.CO-HbやMet-Hbの測定も可能であり,一酸化炭素中毒やメトヘモグロビン血症の診断にも有用である.
B.検査の正常値
表1図に動脈血ガス分析の正常値を示す.
C.呼吸状態の評価
1酸素化障害の評価
1PaO2,SaO2 PaO2は動脈血酸素分圧,SaO2は動脈血ヘモグロビン酸素飽和度を示す(SpO2はパルスオキシメータで非侵襲的に測定された動脈血酸素飽和度).
PaO2=
{FIO2×(PB-47)-PaCO2/R}-(A-aDO2)
FIO2:吸入酸素濃度,PB:大気圧,R:呼吸商,A-aDO2:肺胞気動脈血酸素分圧較差
PBは一定とするとPaO2を規定する因子はFIO2,PaCO2,A-aDO2となり,高炭酸ガス血症やA-aDO2の開大が低酸素血症の原因となる.A-aDO2の開大は ①シャント,②換気血流不均等,③拡散障害により起こる.PaO2はSaO2を決定する最も重要な因子であり,特にPaO2が60Torr以下に低下するとSaO2の急激な現象が起こる(図1図).
組織への酸素供給は心拍出量とCaO2により規定される.CaO2は動脈血酸素含有量であり,以下の式で示される.
CaO2=
(Hb値×1.34×SaO2)+(0.0031×PaO2)
上記式からPaO2よりもHbとSaO2(あるいはSpO2)のほうがCaO2に与える影響が大きいことがわかる.
2P/F ratio 重症患者や救急患者の多くは診察時に酸素投与を実