A.救急医療における超音波検査の位置づけ
1手順と考え方
超音波検査は簡便で侵襲が少ない検査であり,繰り返し行うことが容易なため,経時的な変化を追うのに適している.また検査に引き続き,超音波ガイド下に穿刺を行うことで,より診断の質を高めることができる.さらに超音波ガイド下にドレナージをすることも可能で,治療につなげることもできる.超音波検査は,救急医療において,かなり利便性が高い手技である.本項では,このような今日的な視点から,救急領域における超音波検査の位置づけをとらえて,要点を整理する.
2注意点
救急医療の現場では,時間的・空間的な制約を受け,どうしても精度が落ちることはやむをえない.予定検査と異なり,前処置はされていないし,体位や呼吸に制限があり,必ずしも患者の協力が得られるわけではない.描出できる範囲,臓器にも限度があることもある.そういう条件の中で検査を行っていることを念頭に置く.つまり,見落としのない検査を心掛けるのは当然であるが,漫然と全体を観察するのではなく,患者個々における病態を考えながら必要な所見を,できるだけ短時間で得るようにする.その際には,陽性な所見のみを拾い上げるのではなく,陰性な所見,所見が認められないということも重要となる.
また,どうしても所見が得られない場合は,いたずらに時間を費やすのではなく,躊躇せず他の画像診断を併用すべきである.
以下に,代表的な救急病態を取り上げ,超音波検査の活用法について述べる.
B.FAST(focused assessment sonography for trauma)
外傷初期診療ガイドラインのprimary surveyにおける画像診断の1つに位置づけられる.外傷症例において,心嚢,腹腔および胸腔の液体貯留の検索を目的とした迅速簡易検査法である.外傷症例がショックに陥る原因として,閉塞性ショックと出血性ショ