診療支援
治療

臓器移植のシステム
The system for organ procurement from heart beating donor
荒木 尚
(足利赤十字病院・救命救急センター副部長)
横田裕行
(日本医科大学教授・救急医学)

 2010年7月17日「臓器の移植に関する法律の一部を改正する法律(いわゆる改正臓器移植法)」が施行された.これに伴い,本人の臓器提供に関する生前意思が存在しなくとも,家族の承諾によって脳死下臓器提供が可能となり,同時に従来設けられていた年齢制限が撤廃されたため,15歳未満の小児からの脳死下臓器提供も可能となった.また親族優先提供の機会も設けられた.今後,国内の法的脳死判定および脳死下臓器提供の機会の増加が予想されている.特にわが国では未だ小児における法的脳死判定の実施と,脳死下臓器提供の経験が存在しないため,この度の改正により脳死判定基準,臓器提供施設や判定医の資格の問題,被虐待児除外の手法などが新たに定められた.臓器提供における具体的な手続きは,「臓器の移植に関する法律施行規則」,「臓器の移植に関する法律の運用に関する指針(ガイドライン)」に則った方法で行うこととされている.


A.脳死判定の現況

 2006年度厚生労働省科学特別研究事業の「脳死者の発生等に関する研究」(主任研究者:有賀徹・昭和大学救急医学教授)の報告によると,アンケート回答施設全体の年間死亡者数は30,856例で,そのうち17.8%に当たる5,496例が脳死(推定を含む)死亡者数であった.その中で何らかの基準を用いて脳死と判定されたのは1,601例(5.1%)である.

 一部改正されたガイドラインでは,脳死下臓器提供はいわゆる従来の四類型施設(大学病院,日本救急医学会指導医施設,救命救急センターおよび日本脳神経外科学会専門医訓練施設A項)にて行うことに変化はないが,特に小児からの臓器提供施設に関する規定が設けられ,①救急医療等の関連分野において高度の医療を行う施設であること,②虐待防止委員会等の虐待を受けた児童への対応のために必要な院内体制が整備されていることを要件とし,四類型施設以外に日本小児総合医療施設協

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