診療支援
治療

災害医療体制
The system of disaster medical responce in Japan
甲斐達朗
(済生会千里病院副院長・救命救急センター長)

A.災害時医療の法的骨格

1災害救助法

 災害救助法は,災害により一定規模以上の家屋被害や多数の人命が危険にさらされている時に適用される.国が地方公共団体・日本赤十字社や国民の協力の下に応急救助を行い,被害者の保護と社会秩序の保全を図ることを目的とする.第23条では,「収容施設(応急仮設住宅を含む)の供与,炊出しその他による食品の給与および飲料水の供与,衣服・寝具その他生活必需品の給与又は貸与,医療及び助産,災害にかかった者の救出,災害にかかった住宅の応急修理,埋葬,等」の各種の救助が定められている.第24条および第26条では,「都道府県知事は医療関係者を救助に関する業務に従事させること,また病院,診療所を管理・使用することもできる」と定められている.第45条には,罰則規定も定められている.市町村あるいは都道府県が災害時の救出救助・医療の提供・食料および水の提供,埋葬の提供を行う法的根拠となっている.

2災害対策基本法

 災害救助法は災害が発生した後の緊急災害対応を中心とした法律であったので,総合的かつ計画的な防災行政体制の整備を目的に災害対策基本法が策定された.本法は,防災に関する責任の所在の明確化,国および地方を通じた防災体制の確立,防災の計画化,災害予防対策の強化,災害応急対策の迅速・適正化,災害復旧の迅速化など災害対策全般にわたる施策の基本の確立を柱としている.本法に基づき,国は防災業務計画の策定,都道府県・市町村は地域防災計画を策定している.

3その他の法律

 その他,防災および災害医療に関する法律および厚生労働省通達などを表1に上げる.


B.災害医療体制の再構築

1阪神淡路大震災の教訓

①災害時でも機能する病院の必要性:病院建築物・医療資器材のほか,電気・水道・ガスなどのインフラが被害を受けたため,多くの医療機関が機能不全・機能低下に陥った.特に人的・物的資源を多く必要とする重

関連リンク

この記事は医学書院IDユーザー(会員)限定です。登録すると続きをお読みいただけます。

ログイン
icon up
あなたは医療従事者ですか?