今日の診療
内科診断学

診察の進め方
奈良 信雄


診察の進め方のアウトライン

 診察とは,患者がもっている精神的・肉体的異常を正確に把握し,患者が健康に復帰するために行う適切な処置,すなわち治療を施すうえでの根拠を得るための医療行為のことである.

 この目的には,患者の訴える自覚症状〔愁訴(symptom)〕を確認することから始まり,患者の身体に現れている異常な他覚的所見〔徴候(sign)〕を眼で見たり,手で触ったりして観察する.次いで,必要に応じて臨床検査を実施する.これらを通じて,病態を把握し,疾患を診断(diagnosis)する.

 疾患によっては,病名をただちに診断できることがある.しかし多くの場合は,可能性のあるいくつかの疾患を念頭におき,それらのなかから,その患者に最も妥当と考えられる疾患名を判定していく.この過程を鑑別診断(differential diagnosis)といい,誤診を防ぐためにきわめて重要である.

 正確な診断を下すには,細心の注意を払って診察を進める.わずかな異常所見をも見落とさないためには,常に一定の方式で系統的に診察を行い,必要な臨床検査を適宜組み合わせて診断する.

■正しい診断を下すために

 実際の診療では,以下のように行われる(図2-1)

①患者の自覚症状を聞く(医療面接).

②他覚的所見を診察する(身体診察).

③必要に応じた臨床検査を行う.

④それらに基づいて鑑別診断・診断を行う.

⑤診断された疾患に適切な治療を開始する.

⑥治療効果をみたり,副作用や合併症に注意しつつ経過を観察する.

 患者はなんらかの異常があって医療機関を訪れる.肉体的苦痛に加え,精神的にも不安感や恐怖感がある.また,病歴情報を聴取したり,身体を診察する過程では,患者のプライバシーにふれることも少なくない.こうしたことから,患者を診察するときには,常に真摯で,しかも温かみのある親切な態度で接するべきである.これによって,患者から信

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