今日の診療
内科診断学

皮膚の異常
衛藤 光


皮膚の異常とは

■定義

 皮膚に存在する肉眼的変化を皮疹(exanthema),直接観察しうる粘膜に現れる変化を粘膜疹(enanthema)という.皮疹に時間的要素が加わり,ある時点から出現して短期間で広がるものを発疹(eruption)と呼ぶ.皮疹および粘膜疹の最小単位を個疹という.個疹には原発疹と続発疹がある.

 皮疹および粘膜疹は,個疹がさまざまな時間的・空間的広がりをもって分布し,形成される.

■患者の訴え方

 患者の訴えの基本は,「痒い」か「痛い」,もしくは「無症状」かのいずれかである.実際の表現は「痛痒い」「むずむずする」「ピリピリする」「触ると痛い」などがある.

 痒みのある皮疹を搔爬した結果,二次的なびらんによる痛みが加わることもある.

■患者が皮膚の異常を訴える頻度

 皮膚症状を主訴に受診する患者は決して少なくない.たとえばヨーロッパでの調査によると,プライマリケア医を受診する患者のおよそ7〜10人に1人は皮膚症状が主訴である.

 皮疹を主訴とする患者は増加傾向にあるが,その理由として,近年は衛生状態や居住環境の改善により平常時の皮膚の状態がよくなったため,軽い異常でも医療機関を受診する患者が増えたこと,皮膚癌やアトピー性皮膚炎などの知識の普及が進んだこと,および皮膚疾患に対する治療が進歩したことが挙げられている.

 一般に皮膚の異常に関する訴えは,新生児から高齢者まであらゆる年齢層にみられる.

症状から原因疾患へ

■病態の考え方

(図3-28),(表3-38)

 皮疹および粘膜疹を観察し,その分布と時間的な動きを把握することにより,病態が皮膚限局性のものであるのか,内臓病変や全身疾患と関連するものであるのかを推測する.そのためには皮疹が成り立っている最小単位である原発疹,続発疹について十分理解する必要がある.

 皮疹は皮膚面より盛り上がるもの,平らなもの,陥凹するものの3種類に分

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