今日の診療
内科診断学

視覚障害
須山 信夫
小林 祥泰


視覚障害とは

■定義

 視覚とは外界の物体を認知することである.外界の視覚情報は眼球光学系の働きによって網膜に鮮明な像を結び,画像情報が網膜視細胞で神経信号に変換・情報処理される.そして視神経から始まる視覚路を経て後頭葉皮質で認知され,連合野でさらに高次の処理をされる.この経路のどこが障害されても視覚障害(visual disorder)が生じる.

 これらには網膜(眼底),自律神経(瞳孔,調節),眼球運動,眼瞼運動も関与するが,これらは別項で詳細に述べられるので,本項では視神経〜大脳皮質までの経路での障害について中心に述べる.

■患者の訴え方

 視覚に関する自覚症状は,わずかな異変でも患者は気がつき,主訴とすることが多い.

 この場合,まず視覚障害が片眼のみで生じているのか,両眼に生じているのかを尋ねることが重要である.両眼で障害がある場合は,視索より後方経路の病変が疑われる.

 また連合野での障害は,患者本人が視覚障害に気づかない.特に半側空間無視では「知らない間に人にぶつかる」「最近よく左側が脱輪する」などと,一見,視覚障害に関係ないような訴え方をするので注意が必要である.

■患者が視覚障害を訴える頻度

 視力低下や半盲,飛蚊症などでは大半の患者がまず眼科を受診する.複視の場合は神経内科が多く,一般内科では稀である.

症候から原因疾患へ

■病態の考え方

 視覚情報はまず網膜に達し,錐状体細胞と杆状体細胞で電気信号に変換され,視覚路における第一次感覚ニューロンである双極細胞に達する.次に第二次感覚ニューロンである神経節細胞に伝達され,この軸索が視神経乳頭に集約され,眼球を出て視神経となる.

 視神経は対側の視神経と視神経交叉で合流し,視索を形成して第三次感覚ニューロンである視床の外側膝状体の細胞に終わる.ここから視放線が形成され,後頭葉の鳥距溝を取り巻く第1次視中枢に終わる.

 これらの経路に障害

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