結膜充血とは
■定義
結膜は,眼瞼裏面を覆う眼瞼結膜と,角膜縁から眼球前面の強膜を覆う眼球結膜からなる透明な粘膜である.通常は白色の強膜が透見され,いわゆる白目であるが,感染などの炎症や循環障害により表層結膜の血管が拡張することで白目が赤く見え,この状態を結膜充血という.
結膜充血(conjunctivitis)の原因を特定するためには,細隙灯検査を用いた眼科専門医の診断や,ときに全身検査が必要となることもあるが,本項では視診レベルでの留意点・鑑別点について解説する.
■患者の訴え方
結膜充血の場合,「目が赤くなった」との訴えのほかに,「目やにが出る」「痒い」「コロコロする」などの自覚症状を伴うことも少なくない.これらに加え,視力障害の有無,片眼性か両眼性かといった所見や,感染機会の有無が鑑別診断に有用となる.
いわゆる「目が赤い」という状態は主に「結膜充血」「毛様充血」「結膜下出血」の3種の可能性が考えられ,その3種が混在している場合もある.これらは視診でも鑑別可能であり,随伴症状とともにのちに述べる診断確定のための重要な所見となる.
■患者が結膜充血を訴える頻度
結膜充血は眼部において最も訴えの多い症状の1つであり,「目が赤い」を主訴にする大半の患者は眼科を受診する.
一般内科としては,全身疾患に伴うぶどう膜炎や,頭痛・悪心を主訴とする急性緑内障発作,もしくは視力障害をきたすおそれのあるような角膜炎や,伝染性の強い感染性結膜炎などの際に,適切に専門医にコンサルトを行うことが重要である.
症候から原因疾患へ
■病態の考え方
結膜は,外界に曝露されている粘膜組織であるため,微生物の侵入や機械的・物理的刺激を受けやすい.感染はもちろんのこと,乾燥や異物による上皮障害によっても容易に炎症が惹起されて充血をきたすほか,眼周囲の循環障害や,免疫異常を伴う炎症性全身疾患などでも結膜血管の拡張は