今日の診療
内科診断学

胸やけ・げっぷ
清水 勇一
浅香 正博


胸やけ・げっぷとは

■定義

 胸やけ(heartburn)とは,胸骨下部の背面あるいは心窩部の上部に感じる灼熱感である.

 げっぷとは,曖気,おくび(eructation,belchingまたはructus)と同義語で,胃の中にたまったガスが口外に出たものである.

■患者の訴え方

 胸やけという言葉は,医学用語のなかでは比較的一般的に使用される言葉であり,またそれが上部消化管に関係する症状であることも広く知られている.したがって,具体的な症状よりも,「胸やけがする」の一言で済ませてしまう患者が多い.医療面接では,胸やけが前述の状態と合致するものであるかを明らかにする必要がある.

 「胸が灼ける感じ」「酸っぱいものがこみ上がってくる感じ」とも訴えられ,食後や臥位によって増悪する場合が多い.

 げっぷも一般的に使用される言葉で,げっぷが出ること自体は日常的なことであり,それが単独で訴えられることは少ない.げっぷは,それが頻回に起こる場合,あるいは胸やけやこみ上げてくる感じと同時に発生する症状として訴えられる.

■患者が胸やけを訴える頻度

 胸やけを自覚症状とする疾患で最も多いのは逆流性食道炎であるが,逆流性食道炎でも軽度の場合では自覚症状がない場合もある.

症候から原因疾患へ

■病態の考え方

(図3-138)

 胸やけの病態は単純ではなく,さまざまな因子が組み合わさって生じる食道粘膜の刺激および運動障害と考えられている.

 従来,胃酸を含んだ胃内容物が,食道に逆流することによる食道下部粘膜の刺激症状が胸やけの機序と考えられてきた.しかし,明らかな酸逆流がなくても胸やけは生じることがわかっており,十二指腸液の逆流や食道粘膜の感受性の亢進などが機序として考えられている.

 胃内容物の食道への逆流は,食道・胃の消化管運動機能の異常ととらえることができる.下部食道括約筋(lower esophageal sphi

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