今日の診療
内科診断学

喀血・血痰
海老名 雅仁


喀血・血痰とは

■定義

 一般に喀血(hemoptysis)とはほとんど血液そのものを喀出することをいい,血痰(bloody sputum)とは血液の色を帯びた(あるいは血線の混じった)痰のことを指す.口腔,鼻腔,咽頭腔などからの出血が胃に入って黒い吐血様の性状を呈する場合もあるので注意する.

■患者の訴え方

 「痰に赤い点や線が混じった」というものや「喉元が生暖かくなったら血を吐いた」というものなど,多彩である.一般的には「咳をしたときに出た」と訴えるので,吐血と区別できる.初めてのエピソードの場合,患者はびっくりして出血量を実際より過大に申告する傾向がある.しかし,自らは喀血・血痰と認めたがらず,「トマトを食べたあとなので」「コーヒーを飲んだので」「歯磨きをしていたら」などと,食物残渣や鼻腔・歯肉からの出血だと主張することもある.

■患者が喀血・血痰を訴える頻度

 喀血・血痰を主訴として来院する患者は現在では数%程度とみられ,数十年前に比べて激減している.これは,生活環境の向上に伴い,気道感染あるいは副鼻腔炎が減少したためと思われる.早期発見につながる健康診断の普及も一因であろう.

 ただ,抗凝固薬が原因となることも多いので注意が必要である.

症候から原因疾患へ

■病態の考え方

(図3-163)

 患者が喀血や血痰を訴える場合,第一に,それが気道からの出血であるのか,上部消化管からの出血であるのかを考える(表3-166)

 次に,気道の出血部位や原因をアルファベット順に考える.すなわち,Alveolar(肺胞領域),Bronchogenic(気管支領域),Cardiovascular(心血管系),Diathesis of hemorrhage(出血傾向),Et cetera(その他)に整理し,それぞれの具体的疾患について鑑別する(表3-167)

1. 炎症性疾患

 特に気管支拡張症では気

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