脾腫とは
■定義
脾臓は,健常小児では触れることはあるが,成人では触れることはほとんどない.通常,触知できるようになるには正常の大きさの2倍になっていることが多い.触診上注意すべきことは,仰臥位のみならず右下横臥位でも触診することである.触知しない場合でも,打診で脾濁音界の拡大を知ることも大切である.
超音波検査で容易に脾の大きさを測定でき,長軸が10cm以上ある場合に脾腫(splenomegaly)ありと診断する.触診上,脾腫が臍を越える場合を巨脾という.慢性の脾腫は一般に難治性疾患が多い.
■患者の訴え方
巨脾以外の場合,患者はほとんど脾腫を自ら訴えることはない.巨脾になると左上腹部膨満感が出現する.特に,食事中か食後に胃の膨満感を訴える.左季肋部痛を主訴にすることは稀である.
■患者が脾腫を訴える頻度
脾腫は急性ウイルス感染症では約50%,重症細菌感染症で約20%,慢性肝疾患で50〜70%,溶血性貧血で約70%,血液造血器疾患で約40%に出現する.このうち,自ら左季肋部にしこりの存在を訴えるのは,特発性骨髄線維症,慢性骨髄性白血病,本態性血小板血症などの骨髄増殖性疾患が多い.
症候から原因疾患へ
■病態の考え方
急性に脾腫が生じて,一過性で終わる場合は急性ウイルス感染症,細菌感染症など病原微生物の感染症の初期によくみられる.臨床経過により変化が速いので,早期に診断を決定し,的確な治療方針を決めることが大切である.
慢性の脾腫は難治性の疾患が多い.頻度的に多いものとして,門脈圧亢進によるものと血液・造血器疾患によるものが挙げられる.図3-234図に脾腫の原因となる病態を列挙する.表3-243図に脾腫をきたす代表的疾患を挙げる.
■病態・原因疾患の割合
(図3-235)図
脾腫をきたす疾患はきわめて多岐にわたり,臨床的に軽症のものから重症のものまで幅が広い.脾腫が慢性化すればするほど難