今日の診療
内科診断学

背部痛
中村 孝志
中川 泰彰


背部痛とは

■定義

 背部痛(back pain,back ache)とは,背中に痛みを訴える状態を指す.ただし,ここでいう背中とは頸部背面から腰部付近までを指す.

■患者の訴え方

 患者は,「肩が痛い」「首が痛い」「背中が張っている」などと訴える.局所が痛いのか,痛みが放散するのか,鈍痛なのか,激痛なのかを把握する必要がある.

■患者が背部痛を訴える頻度

 整形外科外来患者のなかでは,背部痛を訴える患者は10〜20%程度であり,傍脊柱筋の筋肉痛も含め,脊椎疾患が最も多い印象がある.また,肩甲骨周囲の背部痛は頸椎疾患のことが多い.

症候から原因疾患へ

■病態の考え方

(図3-252)

 患者が背部痛を訴える場合,まずそれが脊椎(傍脊柱筋を含む)から生じているものなのか,または胸部(肺,心臓など)や腹部内臓に原因のある疾患であるのかを考える.胸部や腹部内臓に原因のある疾患ならば,呼吸器系疾患,心疾患,消化器系疾患を中心に精査していく.脊椎に原因のある場合は,外傷,変性疾患などの脊椎そのものの精査を行う.

 背部痛を引き起こす原因疾患として主なものを表3-261に示す.

■病態・原因疾患の割合

(図3-253)

 脊椎疾患が多く,特に,傍脊柱筋由来の筋肉痛が臨床的重要度は小さいが,頻度は最も多いと考えられる.最近,転移性脊椎腫瘍が増加しているので,これも念頭におく必要がある.病態,原因疾患の頻度とその臨床的重要度を図3-253に示す.

診断の進め方

■診断の進め方のポイント

 背部痛の原因には,呼吸器系疾患,心疾患,消化器系疾患などの内科的領域のものや,脊椎の外傷,変性疾患などが考えられる.医療面接,身体診察などでこれらの鑑別を行う.また,脊椎の骨転移が初発症状として見つかる悪性腫瘍も存在する.

■医療面接

 背部痛は自覚症状であるだけに,医療面接が診断に重要な役割を果たす.経過や誘因などを中心に,病歴情報

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