今日の診療
内科診断学

四肢痛
中村 孝志
中川 泰彰


四肢痛とは

■定義

 四肢痛(limb pain)とは,上肢(上腕,前腕,手)または下肢(大腿,下腿,足)に痛みを訴える状態を指す.これには頸部から上肢,腰部から下肢への放散痛も含まれる.

■患者の訴え方

 患者は,「手が痛い」「腕がだるい」「足に痛みが走る」「ふくらはぎがしびれる」などと訴える.

 局所が痛いのか,痛みが放散しているのか,鈍痛なのか,激痛なのか,倦怠感としてのだるさなのかを把握する必要がある.

■患者が四肢痛を訴える頻度

 整形外科外来患者のなかでは,四肢痛を訴える患者は10〜20%程度であり,脊椎由来の神経痛様症状が最も多い印象がある.

症候から原因疾患へ

■病態の考え方

(図3-283)

 患者が四肢痛を訴える場合,まず具体的にどの部位かを明らかにする.また,それが四肢痛を訴えている局所の病変なのか,または頸椎,腰椎などの脊椎からの放散痛によるものなのかを鑑別する.さらに,内科的疾患による四肢痛もありうる.

 四肢痛を引き起こす原因疾患として主なものを表3-290に示す.

■病態・原因疾患の割合

(図3-284)

 局所的疾患と脊椎由来の疾患がほぼ半数ずつであり,内科的疾患や悪性腫瘍は1%以下である.病態,原因疾患の頻度とその臨床的重要度を図3-284に示す.

診断の進め方

■診断の進め方のポイント

●四肢痛の原因には,それぞれの局所に障害のあるもの,頸椎や腰椎に原因があって,その放散痛として生じているもの,頻度は少ないが,内科的疾患の結果,局所の症状として四肢痛を生じるものなどがある.

●まず,どの部位が痛いのかをはっきりと聴取することが大切である.また,歩行可能な患者であれば,診察室に入ってくるところから観察することにより,下肢痛の程度を把握することが可能となる.

●なお,四肢痛そのものに対して緊急処置を必要とすることが稀にある.四肢切断などの外傷,閉塞性動脈硬化症などの血行障害

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