今日の診療
内科診断学

失語・失行・失認
山口 修平


失語・失行・失認とは

■定義

 失語・失行・失認は,言語,行為,認知に関する高次機能が大脳の病変により障害された状態を指す.

 言語野の障害によって,言語の理解と表出の障害された状態を失語(aphasia)という.言語機能の4つの様式である「話す」「聞く」「書く」「読む」のいずれかの障害が認められる.

 失行(apraxia)は,筋力,感覚,協調運動に障害がないにもかかわらず,特定の熟練した目的運動を遂行できない症状をいう.障害される運動の種類によりさまざまなタイプがあり,構成失行,観念運動性失行,観念性失行,肢節運動失行,着衣失行,口部失行などに分類される.

 失認(agnosia)は,日常よく知っている対象を感覚器官を通して認知できなくなる障害である.感覚の様式や対象の内容により,視覚失認,聴覚失認,触覚失認,相貌失認,地誌的障害,半側空間無視,身体失認,病態失認などに分類される.

■患者の訴え方

 失語では,重度の場合には言葉で意思を伝達できなくなる.軽い運動性失語の場合には,「言葉がなかなか出てこない」という訴えがある.言語理解に障害をきたす感覚性失語の場合には錯語などが混じるため,訴えの内容をとらえにくい.いずれも患者の言語障害は,周囲の人から指摘されることが多い.

 失行の場合には,目的とする動作ができないと訴える.たとえば,はさみや箸などの道具が使えない(観念性失行や肢節運動失行),服がうまく着られない(着衣失行)などの訴えがある.

 失認では,見るもの(視覚失認),触るもの(触覚失認),聞くもの(聴覚失認)の内容がわからないという訴えがある.さらに,自らの障害を自覚しなかったり,または否認する(病態失認).

■患者が失語・失行・失認を訴える頻度

 これらの高次脳機能障害を訴える頻度は,外来患者の約0.7%と頻度は少ない.この3つの症状のうちでは,失語症の頻度が最も高い.さらに,脳

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