今日の診療
内科診断学

構音障害
山口 修平


構音障害とは

■定義

 構音障害(dysarthria)は,末梢発語器官,すなわち構音に関与する舌,口蓋,口唇,喉頭などの構音筋群およびその支配神経系の障害による発語障害を指す.意図した音と異なる音が発せられたり,他の音が混じったり,音を省略したり,構音が不明瞭になったりする.

■患者の訴え方

 患者は,「発音がおかしい」「ろれつが回りにくい」「うまくしゃべれない」などと訴える.「言葉が出にくい」という場合には,失語症との鑑別が必要である.

■患者が構音障害を訴える頻度

 神経内科外来患者の約2%が構音障害を主訴に来院する.脳血管障害のなかでは10〜15%の患者で構音障害を認める.

症候から原因疾患へ

■病態の考え方

(図3-301)

 構音障害を訴える場合,先天的な構音器官の異常や発育障害によるものか,後天的な疾患によるものかを考える.後天的な原因の場合,まず神経筋疾患が考えられる.神経筋疾患は,さらに中枢性疾患と末梢性疾患に分けて考えることができる.また特殊な感染症による構音障害も原因となりうる.

 それらの原因疾患として主なものを表3-313に示す.

■病態・原因疾患の割合

 年齢によって疾患頻度に大きな差がある.小児では多くが出生早期の構音器官の形態,機能異常に基づくものである.成人になると,後天的な疾患によるものが大部分を占める.後天的疾患のなかでも中壮年までは末梢性神経疾患,筋疾患,脱髄性疾患,脳内外の悪性腫瘍などが多い.高齢者になると脳血管障害や脳の変性疾患が多くなる.感染症の頻度は少ない.原因別の頻度とその臨床的重要度を図3-302に示す.

診断の進め方

■診断の進め方のポイント

●まず構音器官の形態異常に基づくものを除外する.

●次いで中枢神経および末梢神経系の器質的な疾患を念頭において,治療可能な疾患,重篤な疾患を見逃さないことが重要である.

●急速に出現,進行する脳血管障害,炎症性

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