今日の診療
内科診断学

筋緊張異常
岡田 和悟
小林 祥泰


筋緊張異常とは

■定義

 骨格筋は,筋紡錘と脊髄の間に存在する伸長反射をはじめとするいくつかの反射により,絶えず不随意に緊張した状態にあり,この緊張を筋トーヌス(muscle tonus)と呼ぶ.筋トーヌスが存在することにより,伸展に抵抗したり,関節の過度の運動阻止,姿勢保持がなされている.

 筋トーヌスの異常(筋緊張異常)(muscle tone abnormality)とは,疾患や病態により筋トーヌスに異常をきたし,亢進や低下を示すことを意味する.

■患者の訴え方

 通常,患者自身は直接筋トーヌスの異常を訴えることはなく,原疾患に伴う症状の訴えが多い.

 筋トーヌス亢進では,「歩行のつっぱり感」や「足を引きずる」「動作が遅くなった」と訴え,筋トーヌスの低下は,軽度では気づかないことが多く,高度では合併する筋力低下の訴えがみられる.

■患者が筋緊張異常を訴える頻度

 筋トーヌスに異常をきたす疾患の頻度による.脳血管障害やParkinson(パーキンソン)病による筋トーヌスの亢進は高齢者に多いが,多発性硬化症は20〜40歳代にみられ,先天性神経筋疾患(筋ジストロフィーなど)は幼小児,若年者に多い.

症候から原因疾患へ

■病態の考え方

(図3-319)

 筋トーヌス異常は脊髄反射に関与するどのレベル(錐体路,錐体外路,前庭系,脳幹網様体などの固有受容反射系脊髄前角細胞,末梢神経,神経筋接合部,筋)の疾患でも生じうる.

 筋トーヌス亢進は,脊髄前角細胞より上位の病変でみられ,錐体路障害による痙直(spasticity)と,錐体外路系の障害による硬直〔固縮〕(rigidity)に分けられる.痙直は運動に関する抑制のとれた状態と考えられ,硬直は制御の異常といえる.

 筋トーヌス低下は,脊髄から筋のレベルでの障害,ないしは小脳病変,舞踏病などの疾患で認められ,前者では運動障害を伴う.

 筋トーヌスの異常をみた場

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