今日の診療
内科診断学

歩行障害
山口 修平


歩行障害とは

■定義

 歩行動作は,骨・関節・筋肉などの運動器に加え,錐体路,錐体外路,小脳,前庭神経系,下位運動ニューロン,深部覚や視覚などの感覚神経系などの神経系が,構造的,機能的に密接に関連し合って行われている.歩行障害(gait disturbance)は,これら諸器官のいずれかの機能が障害されたときに現れる.

■歩行障害患者の訴え方

 患者は,「足がつっぱる」「足が前に出ない」「突進する」「足先が引っかかる」「速く歩けない」「ふらつく」「階段が昇りにくい」「しばらく歩くと足が痛くなり,長く歩けない」などと訴える.

 また,「転びやすい」という訴えも歩行障害に関連している可能性が高い.

■患者が歩行障害を訴える頻度

 患者が歩行障害を主訴として来院する頻度は,神経内科外来の患者の約5%である.

症候から原因疾患へ

■病態の考え方

 患者が歩行障害を訴える場合,その歩行状態をよく観察し,まずどのような歩行障害に分類されるかを判断する(図3-328).病変の部位や種類により,比較的特徴的な歩行異常が分類されているので,それに当てはめて考えるとよい.

 それぞれの分類に対応する疾患として主なものを表3-349に示す.分類に当てはまらず,奇異な歩き方をする場合には,心因性の可能性を考える.

■病態・原因疾患の割合

 年齢で疾患頻度に大きな差がある.

 小児期に起こるものには,神経筋疾患によるものとして,精神運動発達遅延,脳性麻痺,二分脊椎,脊髄腫瘍,大腿四頭筋短縮症,Friedreich病などがある.骨・関節疾患では先天性股関節脱臼,股関節炎,内反股などがある.

 中壮年期に起こるものとして,神経筋疾患では頸椎症性ミエロパシー,脊髄腫瘍,脊髄空洞症,脊髄血管性障害,多発性硬化症,Guillain-Barré症候群,筋萎縮性側索硬化症,多発ニューロパシー,多発性筋炎などがある.骨・関節疾患では腰椎椎間

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