今日の診療
内科診断学

急性腎不全
長浜 正彦


急性腎不全とは

■定義

 かつては急性腎不全(acute renal failure; ARF)と認識された疾患群は,明確かつ具体的な定義が示されないまま,複数の定義が混在していた.この定義の不明確さは疾患自体のあいまいさだけでなく,急性腎不全の疫学研究を行う際に別々の研究の比較や統合を行ううえで大きな問題となっていた.

 また,腎機能の軽微な低下でさえも予後に影響することがわかってきたため,2000年に国際的な専門家団体であるAcute Dialysis Quality Initiative(ADQI)が急性腎不全の世界標準の定義としてRIFLE(Risk,Injury,Failure,Loss,End-stage kidney disease)分類を策定した.

 RIFLE分類は,血清クレアチニン(Cr)値や糸球体濾過量(GFR)のみによる急性腎障害(AKI)の検出で,実地臨床での利便性や診断へのアプローチとしての多角性に乏しかった.そこで,尿量の減少による分類が加えられたのが,AKIN(acute kidney injury network)によるAKIN分類である.

 その後,2012年にRIFLE分類とAKIN分類を融合させた新たなAKIの定義がKidney Disease Improving Global Outcomes(KDIGO)から発表された(表3-405)

 現在では,AKIの早期診断,早期治療の重要性や一過性のAKIによる長期予後への影響などを示す研究が多く示され,早期にAKIを認識して適切な治療を行うことのみならず,AKIリスクが高い患者への予防を含めた対応が求められている.

 また,図3-364に示すように,AKIにおいて血清Cr値は早期診断のための必ずしも鋭敏な指標とならない点も認識しておくべきである.腎機能の急激な変化が起きたとき,血清Cr値は遅れて

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