今日の診療
内科診断学

妊娠と分娩
山中 美智子


妊娠と分娩とは

■定義

 ヒトにおいて妊娠(pregnancy)とは,受精卵の着床から始まり,胎芽または胎児および付属物の排出をもって終了するまでの状態をいう.分娩(delivery)とは,胎児および付属物(胎盤,臍帯,卵膜,羊水)が娩出力により産道を通って母体から排出される一連の生理現象をいう.

 妊娠週数は,最終月経開始日を0日として計算し,妊娠40週0日が分娩予定日となる.通常,受精は妊娠2週0日に卵管内で成立し,そこから約1週間かかって子宮腔内に到達して着床が始まる.ただし,これは月経周期が28日の人を基準としており,周期が異なる場合は,最終月経開始日から排卵までの日数が14日ではなく,妊娠週数にもずれが生じるので注意が必要である.

 妊娠・分娩は生理現象の1つであるとはいえ,正常な経過をたどるとは限らず,母児の生命にかかわるさまざまな異常をきたすので,正常に経過しているのか異常を伴うものであるかどうかの見分けが重要である.

 妊娠22週よりも前に胎児が排出された場合には流産といい,妊娠22週以降36週までに分娩に至る場合を早産,37週から41週の分娩を正期産,42週以降を過期産という.妊娠の各時期と胎児の発育の目安を図3-369に示す.

 異所性妊娠とは受精卵が子宮体部内膜以外の場所に着床し,成育した状態をいう.受精卵の着床部位により卵管妊娠,卵巣妊娠,腹膜妊娠,頸管妊娠,卵管間質部妊娠,帝王切開瘢痕部妊娠,子宮筋層内妊娠に分けられる.

■患者の訴え方

 現在のわが国では,大多数の妊婦は産婦人科で妊婦健診を受けており,また一般には妊娠中であるからこそ慎重で,妊娠を告げずに他の医療機関を受診することは少ないが,妊娠の初期には妊婦自身が妊娠に気づいていないことも多い.一方では,正期産の時期になるまで妊娠に気づかずに,あるいは妊娠に気づいていても妊婦健診を全く受けないままに,なんらか

関連リンク

この記事は医学書院IDユーザー(会員)限定です。登録すると続きをお読みいただけます。

ログイン
icon up
あなたは医療従事者ですか?