今日の診療
内科診断学

外傷
望月 俊明


外傷とは

■定義

 外傷(trauma)とは,外的要因により身体の組織,臓器が損傷を受けることである.外傷は,外力発生の種類,損傷形態,損傷部位などによりさまざまな分類がある.

 外力の種類による分類としては,鈍的外傷と穿通性外傷に分類される.鈍的外傷は鈍的な形状のものによる外傷と定義され,交通事故,墜落,転落など,わが国の外傷の大半を占める.穿通性外傷とは,刃物や銃などの鋭的な形状のものによるもので,傷害事件や自傷行為などで生じることが多い.局所の内臓の高度障害をきたすことがあり,重症となることが多い.

 損傷部位による分類としては,その数により単独外傷,多発外傷とに分類される.通常,AIS(Abbreviated Injury Scale)注1)3以上の損傷が身体区分の2区分以上にみられるものを多発外傷という.

注1)AISとは,外傷の種類と解剖学的重症度をコードで表し,重症度を6段階で評価したもの.

■患者の訴え方

 外傷による愁訴の多くは受傷部位の疼痛である.特に骨折による疼痛は非常に強いが,患者の表現としては上腕を損傷していても「右手が痛い」など,漠然とした表現となることが多いので,必ず視診,触診により受傷部位の詳細を把握する必要がある.高齢者や小児では疼痛の訴えがはっきりせず,「痛がっているようだ」など,家族からの情報が重要となることも多い.

 また,疼痛に随伴する症状として,頭部外傷では,視力障害,複視「目がかすむ,ものが二重に見える」や,聴力障害,咬合障害「ものを噛むときに力が入らない」,頸部外傷では,頸部絞扼感「喉が締めつけられる感じがする」,咽頭違和感,胸腹部外傷では,呼吸苦,脊髄損傷では,筋力低下,感覚脱失「手足がなんとなく動かしづらい」など,損傷臓器により多彩な症状を訴えることがある.

 四肢の変形など,見た目に派手な外傷に目がいってしまい,上記のような愁訴を軽視する

関連リンク

この記事は医学書院IDユーザー(会員)限定です。登録すると続きをお読みいただけます。

ログイン
icon up
あなたは医療従事者ですか?