現病歴:会社員.仕事を終え,妻の誕生日祝いでフレンチレストランにて食事をした.普段ほとんど酒を飲まないのに,この日は赤ワインをボトル半分飲んだ.帰宅して入浴し,床に就いて約1時間したところで,急に頭痛が出現した.頭痛発生後2時間で救急外来を受診した.患者に頭痛を詳しく説明してもらうと,「とにかく経験したことのない頭痛」と訴えている.
既往歴:生来健康.
身体所見:意識は清明.身長168cm,体重67kg,体温36.8℃,脈拍90回/分,血圧160/95mmHg,呼吸数24回/分.呼吸音清明,心音は心拍正常.救急外来に来てから一度嘔吐した.頭が痛くて目をつぶっていることが多い.
神経学的所見:項部硬直やKernig徴候はなく,羞明感もない.運動や感覚の麻痺もない.
診断の進め方
特に見逃してはいけない疾患
・くも膜下出血
・脳梗塞
・脳出血
・髄膜炎,脳炎
(以上は二次性頭痛と呼ばれる)
・片頭痛などの一次性頭痛
頻度の高い疾患
救急外来での観察データ(日本頭痛学会:慢性頭痛の診療ガイドライン2013)
・一次性頭痛38.3%(うち,片頭痛が6.6%)
・二次性頭痛53.6%(うち,くも膜下出血は8.1%)
プライマリケアの診療
・緊張型頭痛
・片頭痛
このほか念頭におくべき疾患
・高血圧
・低酸素血症
・脳腫瘍
・頭蓋骨・頸・眼・耳・鼻・副鼻腔・歯・口の疾患
■この時点で何を考えるか?
医療面接と身体診察を総合して考える点
患者は,頭痛があることは言えるが,その性質を自らが適切に表現できない場合が多い.このため,頭痛の患者に接する場合には,医療面接が非常に重要である(表4-1)図〔症候・病態編「頭痛」参照→〕.
日本頭痛学会が提唱している「慢性頭痛ガイドライン2013」から,頭痛の分類を挙げる(表4-2)図.
この患者の頭痛は,〈p〉2時間前から突然起きている.これまでこのような激しい頭痛は経験していない.また,頭痛は持